ご挨拶

第53回日本てんかん学会学術集会
会 長 加藤 天美
近畿大学医学部 脳神経外科 難治てんかんセンター 教授

 このたび、第53回日本てんかん学会学術集会大会を2019年10月31日(木)~11月2日(土)の3日間、神戸市 神戸国際会議場、ポートピアホテルで開催させて頂くことになりました。阪神地区での開催は日本てんかん学会の半世紀以上の歴史のなかでも初めてのこととなります。

 今回のテーマは、「よりそうてんかん医療」(No One Alone)といたしました。上述の通り、てんかん診療は、患者と医療者のみならず、地域医療や行政をはじめ、幅広く社会に対する働きかけが重要です。これは、てんかん医療に携わる方々がそれぞれの立場で努力することが必要ですが、それのみによってなし得るものではありません。いみじくも、私が留学したモントリオール神経研究所/病院を設立し、てんかんの包括医療を世界で初めて実現したカナダの脳神経外科医Wilder Graves Penfield博士は自叙伝の題名「No man alone」という言葉に、彼を支援した様々な同僚、協力者への敬意と謝辞を述べています。患者のみならず、てんかん医療に携わるすべての関係者に「よりそう」ことが私どもの目指すべき理念であると考え、標語を当世風にアレンジし、テーマといたしました。とくに、今回のプログラムでは、学術集会のテーマに沿ったセッションを、より具体的に「よりそう」セッションとして、マークなどにより明記いたしました。日々のてんかん医療において、患者、介護者、医療者、そして地域社会における問題を解決するための助けになるのではないかと期待しております。

 てんかんの医療はこの数年で大きな進歩を遂げました。とりわけ、てんかんの病態解明が進み、数々の新規抗てんかん薬の上市や食餌治療、診断技術、外科治療の進歩は、てんかんをもつ人々に大きな恩恵をもたらしつつあります。今回の第53回学術集会のシンポジウムでは、てんかん医療を支える最新の進歩や社会との関わり、社会への還元に主眼を置き、会員の間で共有したいと考えております。そのため、高齢者や認知症をめぐる問題、てんかんの生活支援、学業や就労への取り組み、てんかんにおける地域医療の考えなどをシンポジウムでとりあげ、様々な分野の方々と意見を交わしたいと思います。

 また、新規抗てんかん薬や最新のてんかん外科などてんかん治療のリアルワールド、てんかん焦点とネットワーク、てんかん性脳症の諸問題、女性とてんかんなど、広く最先端のテーマをシンポジウムなどによって企画いたしました。さらに、世界で活躍する日本のてんかん専門医の意見、各国のてんかん医療事情、てんかん専門クリニックや各地のてんかんセンターからの提言などにもフォーカスを当てました。とりわけ、日本てんかん学会では、地域における「包括てんかんセンター」を整備しつつあり、今後のてんかん医療の方向が定められます。セッションを設けましたので、是非とも聴講いただければと思います。さらに、初学者を対象として、恒例の、1日でてんかん全体が把握できる「マラソンレクチャー」も企画いたしました。

 外国からSpecial guestとして、新しいILAEの理事長であるSamuel Wiebe先生、および、世界てんかん協会の理事長のMartin J. Brodie先生、モントリオール神経研究所のFrançois Dubeau先生、ILAE事務総長のJ. Helen Cross先生を招待し、ご講演いただきます。この学術集会を通して、てんかん医療の最先端、日本のてんかん医療の諸問題、世界の中での立場、そして未来における展望について会員の皆さまが共有いただける事を祈念しております。また、副会長の貴島晴彦先生が第13回アジアてんかん外科学会(AESC2019)を11月1日-2日にポートピアホテルで同時開催されます。2021年にはアジア・オセアニアてんかん学会(AOEC)が開催されますが、アジアの友人との交流も期待しております。

 このような学術集会は情報交換のみならず、会員間の親交を深め、楽しんでいただく場でもあります。会場近辺の三宮は阪神の玄関口、港町として、グルメ、観光、宿泊施設が充実しております。町中には至る所に瀟洒なレストランやカフェがあり、中華街も有名です。北野異人館街でエキゾチックな風情を楽しむのも一興ですし、豪華な観光クルーズもよろしいかと思います。私どもも「マグロ大学」の異名に恥じることの無いよう、懇親会では「近大マグロ」の解体ショーを提供させていただく予定です。心から皆さまのご参加をお待ちしております。

2018年10月吉日