- 第50回日本てんかん学会学術集会
- 会長 井上 有史
国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター院長
第50回日本てんかん学会学術集会を平成28年10月7日(金)~9日(日)の3日間、静岡市のグランシップにて開催させていただくことになりました。今回は50回という節目の開催ですので、これまでの半世紀を振り返るとともに、今後のてんかん学を展望する企画をスタッフとともに考えました。
テーマは、「てんかんのサイエンスとアート」といたしました。
近年のITによる脳波・画像・遺伝子診断などの進展、基礎研究の展開、創薬、さらにはロボットや自動運転などがてんかんのある人の社会生活に及ぼす影響など、てんかんのサイエンスは大きく変わりつつあります。同時に臨床のエビデンスも飛躍的に増加しており、根拠に基づいた医療を提案することが次第に可能になってきました。
ただ個々の臨床家や研究者には、まだエビデンスに至らない知見、あるいはエビデンスを消化したうえで発展させている技術や知識が数多くあります。さらに、医療者・患者関係という極めて人間的な営為が病気のある人を支えています。医療者が個から集団(チーム)となった場合のダイナミクスは、一層飛躍した効果をもたらします。医療にはこのようなアートという側面があります。本集会では、サイエンスとともにこのアートも考えたいと思います。
このような病気のある人を支える側面にも最近大きな変化があります。第68回WHO総会でのてんかん支援の決議、新難病制度、てんかん地域診療連携体制整備事業、さらに、障がい者に対する差別の禁止、合理的配慮の提供義務、精神障がいの雇用率への算定などは、今後のてんかんケアに大きな影響を与えるものと思われます。このような動きも注視したいと思います。
病気があることは、その人および支援する人にとって大きな負担ではありますが、病気があることによって、病気と向き合って、産出される価値もありえます。病気があることを契機に創造をはじめた、あるいは病態ゆえに独特な価値を創出している人もいます。それらをアートという視点でみたいという思いも本集会のテーマに含めました。このため、てんかんをめぐるアート展、てんかんと映画(映画の上映)なども企画しました。
集会の各プログラムに余裕をもって参加していただけますよう、今回は会期を3日間としました。
本集会の前日6日(木)にはサテライト集会、最終日の9日(日)には、てんかん学初心者、専門医を目指す人、そしてメディカルスタッフのためのコース、および市民のための啓発事業も行います。
10月の静岡は皆様を穏やかな気候でお迎えします。多くの方とお会いできるのを楽しみにしております。